※この記事は、小学館 Suits womanに掲載していた記事です。サイト閉鎖に伴い、許可をいただき転載しています。
※2020年1月当時の記事です。
妊娠発覚後、頭に浮かんだのは、お腹が膨らんだ自分の姿でした。
街で見かける妊婦さんたちのように、自分のお腹も大きくなっていくのだろうか……。でも、服はどうしよう?やっぱりマタニティウェアを着るのかな?
まだ全然お腹は膨らんでいないけれど、まるでコスプレ衣装を選ぶかのようなワクワクと恥ずかしさが入り交じった気持ちで、マタニティウェアを探しはじめました。
しかし、探せば探すほど、気分は落ち込んでいったのでした。
没個性との戦いが始まった……!
“当たり障りの無い”服、服、服……!!
“マタニティウェア”と検索して、出てきた画像が、もう……黒、グレー、紺、たまにパステル系のピンクやブルーのオンパレード!!
お腹が出るので、お腹周りのことはしょうがないとしても、ひらひらした素材に謎のシャーリングやドレープといったデザイン。
そして柄は、ほぼ無地!!たまーに、細いボーダーとぼんやりしたチェックがあるくらい。
ひと言で「ダサい!!」と言ってしまえば、簡単ですが、着回しや快適さを考慮して考慮して、世の中の妊婦さんのマーケティングに基づいて、練りにねって開発されたマタニティウェアがこれらなんですよね、きっと……。でも、控えめに言ってもダサい。いや、どう見てもダサい。
マタニティウェアはダサい!
世の中と仲良く、波を立たせること無く出来る限り穏やかに過ごしたい性分の私です。“不味い”、“嫌だ”、“ウザい”、“キモい”など、ネガティブな言葉をはっきり言うことは避けて生きてきました。そんな私の口からも自然と、“ダサい”という言葉が出てきてしまうほどの衝撃でした。
マタニティウェアはダサい!!
“ダサい”などと口に出すなんておこがましいにもほどがありますよね…。そんなに自分はオシャレなのか?!と。でも、これだけは我慢できませんでした。
マタニティウェアはダサい!!!
この腹の底からわき上がる感情には、覚えがありました。
そう、婚活時代に「モテる服を着なきゃ!」と、目に見えない圧力に惑わされて、好きでもない服を買って着た時の気持ちと同じ!
目の前に並んでいる服は、“どこにいても浮かない服”、つまり“誰にもなれない服”ばかりなのです。
このままでは、当時の自分と同じようにアイデンティティーが崩壊し、服が発端となって、“自分の好きなものがわからない状態”に陥ってしまうかもしれない……!
これから、母になるというのに、それでは困る!
“マタニティウェア”とは、なんなのか?
え……?あんまり無い?どうして?
地味すぎるマタニティウェアは、“人との調和を大事にする=みんなと同じが良い”という日本独特の教育&思想によるものなのでは?と思った私は、すぐさま当時家から1分の距離にあったH&Mに行きました。
ポップなデザインの服からシックなデザインの服までお手頃な価格で提供してくれるH&Mなら、きっと私の気持ちに応えてくれるに違いない!!
鼻息あらく「マタニティウェアはどこですか?」と聞くと「この店舗では取り扱いが無くなってしまって、今あるのはセールコーナーに残っているマタニティ用のボトムスだけですね」という予想外の答えが。店舗に無いのなら、オンラインにはあるのは?と思い、スマホを開いてみましたが、そこに並んでいたのは、タイトだったりスカート丈が短かったりするものの、Google検索で“マタニティウェア”と打った時とあまり変わらない服ばかりでした。
すっごい、地味!!!
「H&Mに無くても、ZARAなら、きっと……!」と、救いを求めるようにZARAのサイトを開き、目からウロコが落ちました。
そこには、マタニティウェアなんてものは無く、その代わりに”MOM”というページがあったのです。マタニティ専用に作った服ではなく、通常の服の中で“マタニティでも着られる服”をマタニティモデルが着ていたのです……!!
つまり、普段と変わらずに“自分の好きな服の中で、お腹が大きくても着られるものを選んで着れば良いよね!”ということでした。
妊婦は、“マタニティウェアと呼ばれる服”しか着られないと思い込んでいた私にとって、目が覚めるような瞬間でした。
「そうか、わざわざ“マタニティウェア”を買わなくても良いのか!」
実際、何を着て過ごしたのか?
持っている服の中から、着られるものを探す。
もともと持っていた服の中で、ゆったりめのワンピースとニット素材のスカートが重宝しました。
ウエスト下部にタックが入っていて、ゆとりのあるテーパードタイプのズボンも妊娠初期は履いていましたが、中期以降はズボン類は全く履けなくなりました。
ズボンが履きたくてしょうがなくなり、何度かマタニティ用のズボンを探しに行ったのですが、結局気に入ったものは見つからず、残り数ヶ月の為に妥協して買うのはもったいないと思い断念しました。
もともと持っていたワンピースがウエストがゆったりしたものが多かったので、臨月までそのまま着ることが出来ました。
妊娠中に新たに購入した服は、ワンピース1枚とニットスカート1枚。どちらもマタニティ用ではなく、産後も着られるものを買いました。
“非マタニティ用”ウェアを支えた“マタニティ用”の名脇役たち
\マタニティウェアはダサいから嫌だ!!/
などと、言い放ち、自分の好きな服ばかり着ていた私ですが、やはりマタニティ専用のものには、たくさん助けられました。
マタニティ専用のものって、当たり前だけど快適(笑)!
・マタニティ用レギンス×3
ユニクロで2つ(黒、グレー)、無印で黒を購入。大きくなったお腹をゆったりカバーする構造になっている。ユニクロのものはウエスト部分にゴムが入っていないので、無印のものに比べて、より快適でした。冬にさしかかった妊娠5か月目くらいに購入し、産後5か月くらいまで使用しました。
・マタニティ用タイツ×1
妊娠中に友人(アプリ婚1話で私に婚活アプリをゴリ押しした同期!)の結婚式があり、レギンスが毛玉っぽかったので、きれいなタイツを無印で購入。ゆるゆるのレギンスばかり履いていて、気分もダルダルだったところで、久しぶりにタイツを履いたら気持ちがシャキッとしました。
・マタニティ用のブラジャー×3
ノンワイヤーでホックがたくさんついているもの。妊娠3か月頃から産後半年まで、ほぼこの3つのブラジャーだけで過ごしました。
ちなみに、パンツはマタニティ用は買わずに持っていたものをそのまま履いていました。もともとしめつけ感の無いものばかり履いていたので大丈夫でした。パンツから出てしまうお腹部分はレギンスでカバーしていたので、寒い冬も快適に過ごすことが出来ました。
気に入ったデザインのものが見つからなかったというのが、マタニティウェアを買わなかった最大の理由ですが、赤ちゃんグッズなど産後はきっと想像以上に必要なものが出てくるだろうと予想し、自分用に買うものはとにかく最小限にとどめようと思っていたことがもうひとつの理由です。
ですが、唯一「どうしても新しく買いたい!」と、こだわっていたものが、入院用のパジャマでした。
華やかな色や柄のパジャマを着て、初めて会う赤ちゃんに、見た目も気分も明るく接したいと思ったからです。
しかし、授乳が出来る前開きタイプのものを探すと、マタニティウェア以上に、とにかく地味なものしか見つかりませんでした。色もやっぱりグレー、紺、うすピンク…。なんだか、“ザ・病院着”という感じのものばかりでした。
無いなら、いっそ作っちゃう!?試行錯誤の結果、私が着たものとは?
なんだかんだ紆余曲折ありましたが……、最終的にインドからド派手なマタニティ用パジャマを購入しました。
微妙に生地が薄くて、産院では若干浮き気味で、かなりリゾート感あふれるものでしたが、産前の私の思惑通りこのパジャマのおかげで出産、産後の数日間の入院、その後の家での静養期間も明るい気持ちで乗り越えることが出来ました。
入院当日、不安な気持ちで入った、白っぽい色ばかりの病室の中で、このパジャマをカバンから取り出した瞬間に周りが明るくなったことをよく覚えています。産後のホルモンバランスの乱れで、気分が落ち込みそうな時も、このパジャマが視界に入るたびに、その派手すぎる佇まいに励まされました。
“たかが服”と思う方もいると思いますが、そのたかが服を変えるだけで、こんなに明るい気分になれたのですから……!
つわりで体調が優れなかったり、不安になったり、普段よりも気分が落ち込んでしまいやすい妊娠中〜産後までの間に着られる、明るい雰囲気の服がこれからもっと増えると良いなと思います。なんなら、いっそ自分でそんな服のブランドを立ち上げたい!とすら思っている次第です。
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